2045年3月22日(土曜日)

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不動産・テクノロジー

家事アンドロイド普及、住宅評価に新基準

充電導線や家電連携を重視 「駅近」に加え「稼働しやすさ」
2045年3月22日 5:00

家庭向け人型アンドロイドの普及に伴い、住宅市場で新たな評価軸が浮上している。従来の駅距離や築年数、省エネ性能に加え、家事アンドロイドが無理なく稼働できる住空間かどうかを重視する動きが広がってきた。大手不動産各社や住宅設備メーカーは、物件の差別化要素として充電スペースや家電連携機能の整備を進めている。

人型アンドロイドは、人間向けに作られた住宅で使えることが最大の特徴だ。階段の上り下りやドアの開閉、キッチン設備の利用などが可能で、大規模な住宅改修をしなくても導入できる。このため初期の市場では「住宅を変えなくても使える」ことが普及の追い風となった。

もっとも、普及が進むにつれ、使えることと、効率よく働けることは別だとの認識も広がっている。実際には、充電位置が生活導線を妨げないか、洗濯機や収納の配置が極端に複雑でないか、段差や滑りやすい床で作業効率が落ちないかといった細かな条件が、日々の使い勝手を左右するという。

首都圏の中古マンション仲介を手がける大京穴吹不動産では、物件説明の際に「生活支援ロボットとの相性」を質問する購入希望者が増えた。共働き世帯や高齢の親との同居を想定する層を中心に、掃除、洗濯補助、荷受け、見守りなどを担う家事アンドロイドを前提に住宅を選ぶケースが出ているという。

住宅メーカーも対応を急ぐ。積水ハウスは、分譲住宅で待機・充電場所を設計段階から織り込む仕様を広げる。パナソニック ホームズは、照明、スマートロック、空調、キッチン家電をアンドロイドと連携しやすい形で統合するパッケージ商品の投入を始めた。LIXILも、住宅設備の開閉部や操作系について、人と機械の双方が扱いやすい規格設計を進める。

市場関係者の間では、今後評価されるのは「ロボット専用住宅」ではなく、「人にも機械にも使いやすい住宅」だとの見方が多い。高齢者や子どもにとって安全で、家事負担も軽く、機械も働きやすい空間は、結果として幅広い世帯にとって利便性が高いためだ。かつてはバリアフリーや省エネが住宅価値を押し上げたが、足元ではそこに「自動化適性」が加わりつつある。

不動産流通推進センターの調査では、首都圏の新築・築浅物件のうち、充電導線や宅配・家電連携など一定の条件を備えた住戸は、購入検討時の評価が高い傾向がみられた。価格への影響はまだ限定的だが、住宅会社の間では「5年後には標準仕様になる」との見方も出ている。

一方、課題もある。家庭内で稼働するアンドロイドは、映像、音声、生活行動に関する情報を継続的に扱う。家電や住宅設備との連携が進むほど、どのデータをどこまで外部事業者が取得するのかが分かりにくくなる懸念がある。国土交通省と個人情報保護委員会は、住宅設備と生活支援ロボットの接続時におけるデータ管理の指針づくりを進めている。

人型アンドロイドは、住宅のあり方を一変させる存在ではない。だが、既存住宅で使えるからこそ、日常生活の細部に入り込み始めた。今後、住宅市場で問われるのは、導入できるかどうかではなく、どれだけ自然に共存できるかになりそうだ。