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労働

アンドロイド普及で技能検定再編、清掃・警備で『人間介在率』評価

現場作業の巧拙より監督能力を点数化、厚労省が新指針
2045年3月28日 5:00

厚生労働省は27日、清掃、警備、設備保守の3分野で技能検定の評価項目を見直す新指針を公表した。人型アンドロイドや半自律機の導入が進み、作業者本人の手技だけでは現場の生産性や安全性を測れなくなったためだ。新指針では、従来の作業速度や動作精度に加え、機械の稼働計画、異常停止時の復旧判断、顧客への説明責任を含む「人間介在率」を評価対象に加える。制度改定は2036年以来となる。

対象は国家検定のビルクリーニング、施設警備、建築設備管理の1級・2級で、2046年度試験から段階導入する。厚労省によると、3分野の就業者約412万人のうち、何らかの自律機器と協働する比率は74%に達した。一方、労災認定のうち機器誤作動や監督不備に起因する案件は2040年度比で1.8倍に増えた。現場では「人が何をしたか」より「どこで介入すべきだったか」を問う場面が増えており、従来型の技能証明では人材価値を示しにくくなっていた。

象徴的なのが清掃業界だ。大手の日本環境メンテナンスやセイワ・ファシリティは、床面洗浄や巡回除菌の大半を汎用清掃アンドロイドに切り替えたが、発注者が重視するのは稼働台数ではなく事故率と苦情率になった。東京都内の大型複合施設では、夜間清掃の人員を5年前比で42%減らした一方、遠隔監督者1人が担当する機体数は平均3.1台から7.4台に増えた。現場責任者には、作業そのものより動線再設計や閉館後のテナント調整能力が求められている。

警備でも構図は同じだ。警備ロボットの巡回は標準化したが、不審者対応や災害時の避難誘導では、機械判断を止めるタイミングが損害額を左右する。三陽セキュリティ総研の集計では、商業施設での警備事故の63%は初動の遅れではなく、機械運用の過信に起因した。新検定では、映像要約AIの報告をうのみにせず、現場確認を差し込む判断や、多言語来訪者への即時対応も採点対象になる。外国人就業者の比率が高い業界だけに、翻訳端末を介した説明の正確さも重みを増す。

制度変更は賃金テーブルにも波及する可能性がある。連合総研の調査では、協働機器を扱う現場で、作業員と監督補助の賃金差はなお月額2万8000円にとどまる。だが企業側は、事故賠償や保険料率の上昇を受け、監督人材の処遇見直しを急ぐ。大和総研は、新検定の定着で3分野の上位資格者賃金が今後3年で6〜9%押し上げられる一方、単純補助業務の時間単価は実質横ばいになるとみる。人手不足下でも、同じ現場内で価格がつく能力の差は広がる公算が大きい。

技能の再定義は、人口減少社会での雇用維持策でもある。作業そのものを機械に移しても、責任の所在まで無人化することは難しい。桐生政権が掲げる就労継続率の引き上げにとっても、高齢就業者や転職者が『手を動かす人』から『止める判断をする人』へ移れるかが焦点になる。人手不足を埋める技術が、逆に人間側の技能証明を細かく要求する局面に入った。検定の改定は、その現実を制度面で追認した形だ。