2045年3月22日(土曜日)

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教育

初級職消失で大学再編、実習先は企業でなく自治体に

AI代替で下積み仕事細る 文科省、地域運営型インターン拡充
2045年3月28日 5:00

業務AIの浸透が進み、若年層の職業形成に必要だった「初級職」が急速に痩せている。文部科学省の2044年度調査によると、大卒1〜3年目が担っていた事務補助、一次分析、問い合わせ対応など定型業務のうち62%がAI業務システムまたは業務ソフトに置き換わった。企業では即戦力採用が強まり、大学教育の役割は知識付与から「責任のある実地判断」を経験させる場へ移りつつある。

この変化が及んでいるのは採用市場だけではない。大学の実習先の構図が変わり始めた。従来はメーカーや金融機関が中心だった長期インターンの受け皿として、2044年度は自治体と広域行政組織の比率が31%と、5年前の12%から大きく上昇した。住民窓口、災害対応、外国人相談、老朽インフラ点検補助など、AIだけでは完結しにくい公共業務が、若者の訓練機会として見直されているためだ。

背景には、企業側が教育コストを負いにくくなった事情がある。企業AI基盤の導入で社員1人あたりの付加価値は上がった半面、教育目的で低生産性の若手業務を残す余地は縮小した。経団連の人材白書では、上場企業の47%が「新人に任せる定型業務の確保が困難」と回答した。採用後に育てるより、自治体や地域団体で現場経験を積んだ人材を採る流れが広がり、採用の前段階が企業外部化している。

文科省は4月から、全国82の国公私立大学を対象に「地域運営実装学修プログラム」を始める。学生は半年から1年、自治体や社会福祉法人、公共交通事業者などで、住民対応や合意形成、現場監督補助を担う。単位上限の緩和に加え、受け入れ先には1人あたり年36万円の訓練交付金を出す。東京都立大、金沢大、立命館大では卒業要件に準じる必修枠として組み込み、就職協定上の評価項目にも反映させる。

教育現場では学部の序列にも変化が出ている。人気が高いのは情報工学そのものではなく、AIを使いながら対人調整や制度運用を学ぶ公共政策、看護・介護マネジメント、地域インフラ運営系だ。河合未来教育研究所によると、2045年春入試の志願者倍率は行政DX学部が6.8倍、地域交通システム学科が5.9倍と、純粋な一般事務就職を想定した経営系学部を上回った。資格よりも「責任を引き受けた履歴」が価格を持つ。

もっとも、課題も多い。自治体実習は地域差が大きく、人口減少が深刻な県では指導人材そのものが不足する。受け入れ先が安価な労働力として学生を使う懸念も根強い。文科省は業務日誌のAI監査と第三者評価を義務づけるが、教育と労働の境界はなお曖昧だ。少子化が続くなか、大学は卒業証書を出す機関から、縮む社会を回すための現場配属前訓練機関へと性格を変え始めた。