部活外注で校庭が資産化、夜間利用料が学校財源に
東京都足立区の区立第十一統合中学校では、午後6時を過ぎると校庭の照明が自動で切り替わり、昼間の授業用設定から夜間貸出用の競技モードに変わる。利用者は生徒ではない。近隣の地域クラブ、外国人労働者向けのフットサル団体、60代後半の健康維持リーグが順番に入る。受付は無人で、利用認証と料金決済はデジタル円で完結する。部活動の地域移管が進んだ結果、学校施設は教育設備であると同時に、夜間に収益を生む公共資産として再評価され始めた。
文部科学省の調査によると、全国の公立中学校で平日夜間に校庭や体育館を定期貸しする割合は2044年度に68%と、2030年代初頭の2倍強に達した。背景には教員の部活動負担軽減だけでなく、競技指導の業務AI化がある。練習メニュー作成、映像解析、事故予兆の検知を遠隔で担えるようになり、学校外の地域クラブでも一定の指導品質を確保しやすくなった。結果として「放課後は学校のもの」という前提が崩れ、空き時間の施設運用が自治体財政の論点に浮上した。
変化が大きいのは会計処理だ。横浜市、福岡市、仙台市など23自治体は2044年度から、学校施設の夜間利用収入を教育委員会の一般歳入に入れず、学校単位の施設更新勘定で管理し始めた。人工芝の更新、断熱改修、見守りカメラ、アンドロイド清掃機の導入費に充てる仕組みで、利用実績の高い学校ほど改修が進む。三井住友トラスト基礎研究所は、全国で同様の処理が広がれば公立学校施設の維持更新費の7〜9%を利用料で賄えると試算する。
この動きは教育格差とも結びつく。駅近で照明設備が整った学校は夜間需要を取り込みやすい一方、人口減少地域では稼働率が伸びにくい。埼玉県内では同じ市内でも年間利用収入が1校あたり2200万円の学校と180万円の学校に分かれる。収益を各校に帰属させれば設備差が固定化しかねず、逆に全市で均等配分すれば需要創出に向けた現場の動機が弱まる。文科省は今月、利用料収入の一部を広域プールし、老朽施設の改修に再配分する指針案をまとめた。
民間企業の参入も広がる。大和ハウス工業やセコムは、学校向けに夜間貸出管理を一括受託するサービスを展開し、照明制御、近隣騒音監視、利用者保険、設備破損時の即時査定をパッケージ化した。従来は体育館の鍵管理や清掃をPTAや教職員が補っていたが、その余地は急速に縮小している。学校施設の運営は教育行政の周辺業務から、公共不動産の稼働率を上げるアセットマネジメントへと性格を変えつつある。
もっとも、学校の公共性との折り合いはなお難しい。都内では夜間利用枠の増加で生徒の自主練習時間が圧迫されるとの反発が出ているほか、外国人団体の利用増を巡って近隣住民が騒音やごみ出しを問題視する例もある。学校は学びの場か、地域インフラか。人口減少下で施設を遊休させる余裕は薄いが、収益性を優先すれば教育空間の論理が後退する。部活動改革の影響は、教員の働き方を超え、学校という資産の意味そのものを変え始めている。