2045年4月26日(水曜日)

日本経済タイムズ

Japan Economy Times
電子版 朝刊
← トップに戻る
教育

通知表に『自律通学係数』 送迎アプリ普及で小学校の評価項目再編

経路逸脱や代理移動の増加受け 生活科・安全指導がデータ連動
2045年4月8日 5:00

東京都足立区立東綾瀬小学校では新学期から、低学年の通知表に「自律通学係数」の欄を設けた。登下校支援アプリと校門認証の記録をもとに、決められた経路の順守、見守り要請の適切さ、緊急時の連絡行動などを4段階で示す。対象は1〜3年生の約410人。保護者が常時伴走しない前提で、子どもの移動を生活技能として評価する試みだ。従来の「安全に気をつける」といった情意評価より、行動履歴に基づく指導へ軸足を移す。

自治体や学校が見直しを急ぐ背景には、送迎の外部化がある。共働きと高齢就労の定着で、保護者本人が送迎できない世帯は都市部で珍しくなくなった。民間の通学支援アプリや認証付き共同送迎サービスの利用者は、教育産業総合研究所の推計で全国286万人と2030年代後半の2.4倍に増えた。祖父母、近隣住民、家事アンドロイド連携の玄関引き渡しを組み合わせる家庭も多く、学校側は「誰が送ったか」より「子どもがどう移動を判断したか」を把握する必要に迫られている。

文部科学省は3月、生活科と特別活動の学習評価に関する運用通知を改定し、通学時の自己判断や多言語支援端末の使用を「生活自立の形成過程」として記録可能とした。通知表への明記は各教育委員会の判断に委ねたが、東京都、愛知県、福岡市など12自治体が先行導入を決めた。経路外への立ち寄りや、見守り端末の電池切れ放置、翻訳支援の未使用による伝達不備なども、生活指導と切り離さず評価する。学校現場では、学力と切り離された第三の基礎能力として位置づける声が強い。

副作用も出ている。通知表に移動履歴が反映されることで、保護者の監督責任が過度に可視化されるとの懸念だ。大阪市内では、共同送迎の遅延が続いた児童に対し、担任が家庭環境改善の面談を求めた事例が議論を呼んだ。日本PTA連合会は「家庭の就労事情を学校評価に持ち込むべきではない」として、係数の学年別上限設定を要望している。一方、損害保険各社は通学事故率との相関に注目し、学校向け賠償保険の料率算定に活用できるか検証を始めた。教育評価が保険実務に接続する構図も見え始めた。

教材市場も動く。ベネッセホールディングスやZ会グループは今春、経路選択や声かけ対応を学ぶ「移動判断ドリル」を相次ぎ投入した。従来の防犯教室や交通安全教室ではなく、配車遅延時の待機判断、見知らぬ高齢者や外国人住民への応答、災害時の迂回申請などを対話型で学ばせる。教員不足のなか、学校は通学路の危険箇所指導まで個別に担いきれない。送迎の外注化が進んだ結果、教育の対象が校内行動から校門の外へ広がり、通知表がその受け皿になりつつある。