2045年4月26日(水曜日)

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経済

冷凍倉庫、夜間より『午前枠』高く 動的料金が給食・製薬に波及

計算資源向け送電の優先で保管時間の価値逆転、物流契約を再設計
2045年4月10日 5:00

神奈川県川崎市の東扇島。三井倉庫ロジスティクスが運営する自動冷凍倉庫では、この春から荷主向け料金表の最上段に「午前6〜11時搬出加算」が並ぶ。従来は深夜電力を活用する夜間帯の保管・仕分けが収益の柱だったが、足元では逆に午前の出庫能力が最も高く売れる。倉庫内の冷却負荷と搬送アンドロイドの充電を、計算資源向け送電制御の谷間に合わせて集中させる運用が広がり、保管業は「いつ冷やすか」より「いつ出せるか」を競う段階に入った。

背景にあるのは、データセンター集積地を中心に進む時間別電力単価の変動拡大だ。資源エネルギー庁によると、首都圏湾岸部の産業向け調整料金は2044年度下期、午前帯が夜間を平均18%下回った一方、夕方から深夜前半は26%上回った。冷凍倉庫各社は庫内温度の微調整、蓄冷材、断熱シャッターを組み合わせ、電力単価の低い時間に集中的に冷熱をためる方式へ移行した。結果として出庫トラックが集中する午前のバース確保が新たな希少資源になった。

影響は荷主側の商慣行に及ぶ。日本学校給食サービス協会は4月、自治体向け標準契約書を改定し、冷凍食材の納品条件に「午前搬出保証」の費目を新設した。学校給食は調理時刻が固定されるため、従来は保管単価重視だった入札が、今後は搬出時刻保証込みの総額比較に変わる。武田薬品工業や第一三共も、温度逸脱リスクより出庫遅延リスクの方が損失額を押し上げるとして、ワクチン原液や治験試料の保管契約を時間枠連動型へ切り替え始めた。

食品卸大手の国分グループ本社では、首都圏の冷凍在庫のうち約3割を、消費期限順ではなく『午前枠適合率』で再配置する。保管場所が奥でも搬送アンドロイドが短時間で取り出せる商品、外装コードを一括読取できる商品を優先し、朝に出しやすい在庫ほど高く評価する。冷凍食品メーカーのニチレイフーズは新製品の外箱設計で、霜付着下でも読める広幅コードと滑り抵抗の低い素材を採用した。商品開発が味や容量だけでなく、倉庫の朝の回転率を前提に動き始めた格好だ。

中小荷主には負担が重い。東京商工リサーチによると、低温物流を使う年商50億円未満企業のうち、時間枠加算を価格転嫁できたのは44%にとどまる。午後納品へ切り替えた外食向け半製品は解凍待機が長くなり、歩留まり悪化も招く。農林水産省は2045年度から、地方の共同冷凍拠点向けに蓄冷設備導入を補助する「低温物流平準化支援事業」を始める。狙いは地方産地が都市圏の午前枠争奪で不利にならないようにすることだが、設備投資だけで解決できるかは見通せない。

冷凍倉庫は長らく電気料金の安い時間に動かす典型業種とみられてきた。だが計算資源向け送電の優先が進んだ結果、電力の安い時間と物流価値の高い時間は一致しなくなった。日本冷蔵倉庫協会は、従来のトン当たり保管料中心の統計では実勢を捉えにくいとして、2046年にも『時間保証付き低温物流指数』を公表する方針だ。エネルギー制約が物流の価格表を塗り替え、給食、医薬、外食の原価管理まで静かに組み替えている。