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テクノロジー

家庭端末、更新保証が『相続資産』に 短命OS避け中古価格に差

総務省研究会が継続保守年数の表示指針、見守り家電の流通慣行変える
2045年4月11日 5:00

東京都江東区の中古家電売買拠点で、今春から査定票の最上段に並ぶのは性能や外観ではない。業務AIを載せた家庭端末の「残存更新保証年数」だ。見守りスピーカー、室内移動センサー、服薬通知端末など高齢単身世帯で普及した機器は、故障していなくても保守終了が近いと値がつきにくい。相続整理や住み替えで放出される家電の評価軸が、耐用年数から保守継続年数へ移っている。

背景にあるのは、家庭内機器が単体製品から生活契約の一部に変わったことだ。端末本体が動いても、認証鍵更新や脆弱性修正が止まれば、住宅認証、医療連携、保険通知が途切れる。リユース大手のゲオネクストとビック・リコマース連合によると、見守り・健康連携家電の再販価格は更新保証が5年以上残る機種で新品価格の42%前後だが、2年未満では18%まで下がる。従来の白物家電より値落ちの勾配が急だ。

総務省のデジタル生活機器研究会は10日、家庭向け接続機器について、販売時に最低保守年数と機能縮退時の範囲を表示する指針案をまとめた。法的義務ではないが、デジタル円決済端末や医療・介護連携機能を持つ製品では実質的な業界標準になる見通しだ。経済産業省も資源有効利用促進法の運用見直しで、更新不能機器の早期廃棄を抑える表示制度を検討する。短寿命設計を続けるメーカーには逆風となる。

波及先として注目されるのが相続と死後事務だ。司法書士法人リーガルリンクの集計では、昨年の高齢単身者の相続案件のうち31%で、見守り機器や鍵管理端末の契約解除に通常より長い日数を要した。端末が停止すると入室権限や課金関係の確認が難しくなるためだ。このため、相続財産目録に「更新保証付き端末」を明記する書式を採る自治体提携士業が増えている。単なる家電ではなく、引き継ぎ可能な生活インフラとして扱う動きだ。

メーカー側も戦略を修正し始めた。パナソニックコネクトホームは2046年度モデルから、家庭向け見守り中継器の保守保証を標準7年に延ばし、追加料金で12年まで延長できる新制度を導入する。シャープライフソリューションズは中古再販を前提に、所有者変更時の認証再設定を30分以内で完了できる設計へ改める。新品販売だけでは収益が細るなか、二次流通価格の高さが初回販売の競争力に直結する構図が鮮明になってきた。

もっとも課題も残る。更新保証が長い機種ほど価格が上がり、低所得世帯ほど短命機器を選びやすい。保守切れ端末が特定地域に偏在すれば、防犯通知や災害連絡の到達率に格差が生じる恐れがある。民間シンクタンクの日本生活圏研究所は、家庭向け接続機器を対象にした「最低更新年数認証」を創設し、自治体調達や保険料率に反映させるよう提言した。端末の寿命は、もはや個人の買い物の問題にとどまらない。