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マーケット

中古制服に『再認証ラベル』 体温調整繊維の劣化可視化で流通再編

学校指定品の再販、真贋より性能表示へ 地方量販店と検査会社に新収益
2045年4月11日 5:00

東京都内の制服量販店「東都スクールリンク」板橋物流センターでは、春の入学商戦の最中、中古ブレザーの内側タグを読み取る作業が続く。担当者が確認するのはブランド名や校章ではない。織り込まれた体温調整繊維の残存率、抗菌層の洗濯耐性、通学見守りビーコンの電源断履歴だ。店頭では今春から、サイズや色と並んで「熱応答性能82」「衛生再処理済み」などの再認証ラベル表示を始めた。中古制服売り場は、古着コーナーから準医療・準安全商品の棚へと性格を変えつつある。

背景にあるのは、学校指定制服の高機能化だ。文部科学省の調査によると、全国の公立中学・高校のうち温熱制御繊維や位置通知部材を組み込んだ制服を採用する比率は2040年の18%から44年に61%へ上昇した。猛暑下の登下校対策や、防犯・安否確認の標準装備化が進んだためだ。一方で機能付き制服の新品平均価格は冬服一式で9万8000円と、2030年代初頭比でほぼ1.8倍になった。家計負担の増加を受け、リユース需要は44年度に前年度比27%増えた。

ただ、流通現場では従来の査定基準が通用しにくくなっていた。見た目がきれいでも、相変化材を使う裏地は洗浄回数で蓄熱性能が落ちる。接触通知用の極小発信体は校内システムからの切り離し処理が不十分だと再販できない。大手フリマアプリ各社は昨秋から制服カテゴリで機能情報の未記載出品を制限し、ビーコン内蔵品は専門検査事業者の証明書添付を義務づけた。個人間取引の即時性より、検査済み在庫の回転率が重視される市場に変わった。

この変化を取り込むのが繊維検査会社と地域量販店だ。ボーケン品質評価機構とユニチカ分析センターは2月、学校用品向けの「再使用性能等級」共同規格を立ち上げ、断熱応答、抗菌残存、電子部材初期化の3項目でA〜Dを付与し始めた。イオンリテールや平和堂は指定制服売り場の一角に回収・再認証窓口を新設し、検査済み中古品を新品の4〜6割で販売する。制服メーカー側も、旧モデルの回収データを次期素材設計に生かせるため、全面的な価格下落圧力とはみていない。

波及は制服にとどまらない。部活動地域移管で需要が増えた指定ジャージー、防災頭巾一体型コート、実習用スマートエプロンでも同様の性能表示が広がる見通しだ。市場調査会社富士経済未来研究所は、学校指定用品の再認証関連市場が44年の310億円から48年に890億円へ拡大すると試算する。家庭の節約策として始まった中古活用が、教育費抑制だけでなく、繊維流通の標準化と検査ビジネスの裾野拡大を促している。

もっとも課題もある。地方では検査拠点が少なく、再認証費用が販売価格の2割前後を占める例がある。学校ごとの仕様差も大きく、互換性の乏しさが市場拡大を阻む。文科省は夏にも、指定用品の機能部材について取り外し可能構造や初期化手順の標準指針をまとめる方針だ。制服の中古流通はこれまで家計防衛策の周辺にとどまっていたが、機能衣料時代には、性能情報を前提にした第二の一次市場として組み直され始めた。