新築分譲、寝室より『待機室』 家庭端末常設で間取り表示改定
首都圏の新築分譲マンション販売で、間取り図の表記が変わり始めた。東京都江東区で今月販売を始めた野村不動産の総戸数612戸の大規模物件では、3LDKのうち1室を「マルチ待機室」と表示した住戸が全体の4割を占める。人が常時使う個室ではなく、家事アンドロイド、見守り端末、配送受け渡し機器の待機・充電・保守をまとめる区画だ。販売現場では「納戸」より成約率が高いという。
背景には、家庭内機器の増加で「空いている部屋」の意味が変わったことがある。東日本不動産流通機構の首都圏調査によると、2044年に成約した築5年以内マンションで、サービスルームや納戸を居住以外の機器スペースとして使う比率は58%と、2040年比で21ポイント上昇した。共働きや高齢単身を問わず、荷受け補助機、洗濯折り畳み機、夜間見守り端末の常設が進み、従来の収納量より給電容量、排熱、床材耐久性が重視されている。
こうした実態を受け、不動産公正取引協議会連合会は14日、分譲住宅広告の表示規約運用基準を改定した。従来は居室、納戸、サービスルームの区分が中心だったが、新たに「常設機器対応区画」の任意表示を認め、床荷重、100ボルト・200ボルト系統数、通信閉域性、給気排気仕様の併記を推奨する。誤認防止のため、採光や避難動線が建築基準法上の居室要件を満たさない場合は、寝室や書斎としての利用を示唆する表現を禁じる。
間取りの変化は専有部だけにとどまらない。三井不動産レジデンシャルや関電不動産開発は、共用部に保守台車が通れる幅1.4メートル以上の搬送動線や、交換電池の一時保管庫を標準設計に組み込み始めた。マンション管理会社の日本ハウズイングによると、首都圏の管理組合総会で昨年度に新設・改定された議案のうち、機器待機場所、深夜充電、共用Wi-Fiの閉域接続規定など端末運用関連は全体の17%を占めた。
住まい手の評価軸も変わる。LIFULL HOME'S総研が3月に実施した購入検討者1万2000人調査では、子ども部屋の可変性を重視する比率は32%と2030年代初頭から低下傾向が続く一方、機器専用区画の有無を重視する比率は47%に達した。老親の見守り機器を日中は稼働させ、自身の就寝中は巡回端末を待機させるなど、1住戸で複数機器を時間帯で切り替える利用が一般化したためだ。単なる省人化ではなく、生活の段取りを崩さないことが住宅価値になっている。
もっとも、専用区画の新設は価格を押し上げる。大和総研の試算では、機器用の独立換気、床補強、予備配線を備えた住戸は標準仕様に比べ建築コストが1戸あたり68万〜112万円高い。販売現場では、その分を寝室面積の圧縮で吸収する例も目立つ。国土交通省内では、長寿単身や介護併走世帯に対応した住戸認定制度に、機器区画の性能項目を盛り込む案が浮上する。住宅が人の器であるだけでなく、常設端末の稼働基盤として評価される流れは一段と強まりそうだ。