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経済

中古EV、航続距離より『静止給電証明』 団地再生で査定軸ずれる

移動資産から住宅電源へ、管理組合と小売りが価格形成に関与
2045年4月16日 5:00

千葉県柏市の再生団地「柏北スマートリンク」では、駐車場の掲示板に中古車販売店の広告より先に、管理組合が認証した「静止給電適合車一覧」が並ぶ。住民が重視するのは走行性能ではない。停電時や計算資源向け送電制御時に、住戸へ何時間、どの出力で電力を戻せるかだ。中古車を内見する際も、営業担当は外装や走行距離より先に、給電履歴と双方向充放電の劣化診断を示すようになった。

背景にあるのは、集合住宅の電力運用が「各戸消費」から「住棟蓄電」へ変わったことだ。国土交通省と経済産業省の調査では、2044年度に改修着工した築30年以上の団地のうち38%が、住民所有EVを非常用・需給調整用の分散電源として管理規約に組み込んだ。2030年代後半から広がったV2H機器の低価格化に加え、昨夏の広域出力制御で夜間給湯停止や共用部節電が相次ぎ、可搬電源としての車両価値が一段と意識された。

この変化は中古車査定の実務を変え始めた。オートバックスセブンと東京海上スマートモビリティ保険は4月、首都圏向けに「静止給電証明」の共同発行を始めた。電池残存率だけでなく、過去24カ月の給電回数、定格3キロワット以上の連続出力時間、非常時自動切替の成功率を点数化する。従来は走行距離1万キロの差が価格を左右したが、足元では証明付き車の平均成約価格が同年式比で12〜18%高い。軽EVや小型商用EVでも、航続距離の短さを静止価値で補う例が増えた。

波及先は自動車業界にとどまらない。イオンリテールやヤマダデンキは団地向け改修販売で、家電一式よりEV連動蓄電パックを前面に出す。中古車販売店と管理会社、電力小売りを束ねた一括提案が増え、販売手数料の配分も見直された。東急コミュニティーは首都圏72物件で、給電適合車を保有する住戸の修繕積立金を月500〜1200円減額する制度を導入した。共用部非常電源の調達費を抑えられるためで、不動産価値と車両価値が相互に連動する構図が強まっている。

もっとも課題は残る。静止給電を繰り返した電池の劣化評価はメーカー間で基準がばらつき、認証表示が乱立すれば消費者の比較は難しい。日産自動車、トヨタ自動車、BYDジャパン、日本電機工業会は今夏をめどに、双方向充放電対応車の中古評価共通指針をまとめる方針だ。一方、賃貸住宅では駐車区画の契約期間が短く、車両を住棟電源に組み込みにくい。移動の自由と地域電源としての責任をどう両立させるか。中古EV市場は、脱炭素の文脈より先に、住宅維持インフラの一部として値付けされる段階に入った。