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経済

洗濯表示、『手作業可』で値付け 家事外部化で衣料OEMが逆対応

折り畳み・色分け・補修前提の設計広がる、量販PBは縫製仕様を見直し
2045年4月17日 5:00

イオンスタイル有明(東京・江東)の衣料売り場で今春から、値札脇に新しい表示が並び始めた。速乾や防臭ではなく「手作業仕上げ適合」「自動畳み誤差小」「補修縫製余白あり」といった項目だ。対象は下着やシャツ、学校向け衣料まで広い。家事の一部を外部サービスや家庭内端末に委ねる世帯が増え、衣類の評価軸が着心地から「処理しやすさ」に広がっている。衣料品各社は洗濯後の畳み、色分け、補修まで見据えた設計を競い始めた。

背景にあるのは、クリーニング店や家事代行だけでなく、集合住宅の共用ランドリー、宅配洗濯網、家庭内の洗濯補助端末が同じ工程データを使うようになったことだ。日本繊維製品品質技術センター(QTEC)によると、2044年度に流通した家庭向け衣料のうち、出荷時に「ケア工程データ」を付した比率は61%と前年から19ポイント上がった。従来の洗濯絵表示では足りず、素材の伸縮方向、つまみ代、裏返し推奨の有無といった工程向け情報の記述が増えている。

量販店のプライベートブランドにも波及する。セブン&アイ・リテイリングは今夏物から一部肌着で脇縫い位置を統一し、洗濯物自動仕分け箱の画像判定精度を高める。良品計画は補修を前提に、裾の折り返し長を平均8ミリ拡大した。ワークマンは高齢就労者向け日常着で、左右の袖口摩耗を個別交換しやすい分割縫製を採用する。縫製回数は増えるが、廃棄率低下で吸収できるとみる。OEM各社の受注では「縫いやすさ」より「扱いやすさ」の仕様書比重が高まった。

変化は川上にも及ぶ。帝人フロンティアや東レ系素材商社では、伸縮率や吸水性に加え、色分離アルゴリズムが誤認しにくい反射特性を示す資料の提示が標準になりつつある。濃紺と黒、生成りと薄灰など、人の目には区別できても端末や共用設備では誤分類が起きやすい組み合わせが返品要因になっているためだ。アパレル大手によると、2044年の返品理由の12%が「洗濯・収納工程との不適合」で、2020年代のサイズ不一致中心から様変わりした。

もっとも、工程最適化が消費者利益と一致するとは限らない。全国消費者団体連絡会は、処理適合表示が実質的に『端末向け衣類』を優遇し、手洗いや個別補修に慣れた高齢者、外国人家政就労者の技能を過小評価しかねないと指摘する。経済産業省は3月、JIS L0001の運用指針改定案に「生活者による手作業での再現可能性」を併記し、機械適合だけに偏らない表示例を示した。表示は増えるが、誰の家事を基準にするかという論点は残る。

衣料品市場は長く、素材機能と価格の競争が中心だった。だが人口減少と家事の分業化で、服は着るための商品であると同時に、処理系に接続される家庭内部材の性格を帯び始めた。繊維専門商社の豊島は、2045年度の国内OEM商談の3割で洗濯後工程の検証データ提出を求められるとみる。目立たない仕様変更だが、縫製、素材、表示、流通をまとめて動かす力は小さくない。