国交省、賃貸に『床荷重公開』指針 介護・家事機器で内見後解約減
国土交通省は16日、賃貸住宅の広告・重要事項説明で、住戸ごとの「床荷重適合情報」の開示を促す指針案を公表した。対象は家事支援機器、移乗補助機、見守り一体型収納、家庭用人型アンドロイドの待機架台など、一定重量を超える家庭内設備の設置を想定する住戸だ。これまで賃貸市場では広さや防音性能の表示が中心だったが、高齢単身や共働き世帯で機器依存が進み、床の局所荷重が入居判断を左右し始めている。
同省によると、民間賃貸トラブル相談のうち、機器設置後の原状回復や安全性を巡る紛争は2044年度に8万2000件と、2030年代後半の1.8倍に増えた。とくに築30年以上の中層住宅では、居室全体の耐荷重では問題がなくても、充電台や昇降補助機器を一点集中で置いた際に管理組合やオーナーと見解が分かれる事例が多い。内見時に確認できる情報が乏しく、契約後の追加工事や中途解約につながっていた。
指針案は法的義務ではないが、広告表示では居室ごとの推奨局所荷重、機器固定の可否、電源容量、通信閉域対応の4項目を標準記載とする。重要事項説明では、床補強の実施履歴や、設置可能な機器区分を示す「住戸設備適合票」の交付を求める。国交省は宅地建物取引業法施行規則の解釈通知も改め、虚偽表示があれば監督対象になり得ると明記する方向だ。今夏から大手仲介会社50社で先行運用に入る。
背景には、住宅が人の居場所というだけでなく、介護・就労・家事の稼働拠点に変わった事情がある。総務省の住宅利用実態調査では、三大都市圏の賃貸入居者の37%が「週5日以上稼働する重量機器」を保有し、65歳以上単身世帯では44%に達した。床荷重が不足すると、玄関近くに機器が偏在し生活導線が狭まる。転倒事故や避難遅れの遠因になるとして、自治体の住宅改修補助でも事前確認項目に加える動きが広がる。
市場では既に選別が始まっている。三井不動産レジデンシャルリースと大東建託パートナーズは、首都圏と中京圏の一部物件で「機器設置適合済み」表示を導入した。適合票付き物件は、築年数が古くても平均空室期間が通常物件より19日短い。改修需要を見込み、積水ハウス系の管理会社は床下補強と200ボルト回路増設を一体で請け負う定額商品を始めた。従来は敬遠されがちだった旧耐震世代後期の物件でも、補強内容を数値で示せれば賃料下落を抑えられるとの見方が出ている。
一方、貸し手側の反発もある。全国賃貸住宅経営協会は、床荷重の測定や表示責任が小規模オーナーに過大な負担を課すと指摘する。築古物件では設計図が残っていない例も多く、簡易診断で「不適合」と表示されれば資産価値が一段と落ちかねないためだ。国交省は1戸あたり3万〜7万円程度の簡易診断費に対し、住宅確保支援交付金の対象拡大を検討する。住宅政策の軸足は省エネや耐震に加え、家庭内機器を前提にした「可動率の高い住戸」整備へ広がりつつある。