自治体入札、清掃頻度より『手直し回数』 アンドロイド前提で仕様書改定
東京都足立区の区役所本庁舎では今春から、夜間清掃の委託仕様書から「1日2回巡回」「床面を目視確認」といった文言が消えた。代わりに入ったのは「再清掃発生率0.8%以下」「開庁後3時間以内の是正完了率95%以上」といった成果指標だ。清掃を担うのは人と床洗浄アンドロイドの混成班で、昼間の利用者苦情や転倒未遂の記録まで契約評価に組み込む。頻度でなく手直し回数で買う方式が、自治体調達の新たな標準になり始めた。
背景にあるのは、人口減少下で維持管理業務の担い手確保が難しくなったことに加え、機器稼働が前提の現場では巡回回数そのものがサービス品質を示さなくなった事情だ。総務省の「公共サービス自動化調達研究会」は17日、公園管理、庁舎清掃、図書館搬送など12業務で、工程指定型から成果連動型への移行指針案を示した。自治体が求めるのは延べ作業時間ではなく、苦情件数、再作業率、停止時間の上限管理に移っている。
総務省によると、政令指定都市と中核市の6割強がこの2年で、庁舎や学校施設の清掃・警備入札に機器稼働要件を書き込んだ。一方で、人員配置数や巡回頻度を固定した旧来仕様のままでは、機器の能力差が価格競争に反映されず、低入札と品質低下を招きやすい。川崎市では2039年から庁舎管理契約を見直し、再清掃率を導入した結果、年間委託費を11%抑えつつ、職員からの苦情件数は3割減った。
影響は清掃業にとどまらない。公園の芝管理では「刈り取り回数」より雑草混入率、街路樹管理では「巡視頻度」より倒木予兆の未補修日数が重視され始めた。仕様書が成果指標中心になると、受託企業は人員を厚く置くより、故障予測ソフトや代替機の保有に投資した方が採算が合う。大和ハウス系の大和ライフネクスト、イオンディライト、セコムは、自治体向けに手直し保証付き契約を相次ぎ投入している。
もっとも、成果連動型には副作用もある。大阪府内の複数自治体では、再作業率を下げるため、受託側が利用者の多い時間帯の作業を避け、結果として高齢者や車いす利用者の通行しやすさが後回しになった事例が出た。全国自治体労働組合総連合は、数値管理が進むほど、現場で残る人手業務が事故対応や苦情処理など高負荷部分に偏ると警戒する。見えにくい配慮をどう契約に織り込むかはなお難しい。
研究会案は、価格点偏重を改めるため、総合評価方式で『手直し回数』『利用者支障時間』『機器停止時の代替復旧力』の3指標を標準採用するよう求めた。自治体側には、発注前に施設内の通信死角や床材差、利用者導線をデータ開示することも促す。仕様の曖昧さを残したまま成果責任だけを民間に負わせれば、応札企業が減るためだ。調達市場は省力化の手段を買う段階を過ぎ、省力化後の失敗コストをどう分担するかを競う局面に入った。