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家電量販、冷蔵庫は『停電保持時間』で棚割り 計算資源優先送電が家庭消費を再編

容量・省エネより食材保全力、共働き高齢世帯と単身長寿層が買い替え主導
2045年4月18日 5:00

ビックカメラ有楽町店の白物家電売り場では、この春から冷蔵庫の値札に「停電保持時間」が大きく表示されるようになった。従来は年間消費電力量や内容積が前面に出ていたが、いまは庫内温度を2〜8度に保てる時間、製氷停止後の衛生維持時間、非常給電端子の有無が上段に並ぶ。売れ筋は500リットル級ではなく、断熱材を厚くした380〜430リットル帯だ。店頭担当者によると、買い替え理由の上位は故障や省エネではなく「計画停電時の食材廃棄回避」に変わった。

背景にあるのは、計算資源向け送電を優先する地域で進む家庭側の受給調整だ。電力広域的運営推進機関の集計では、今冬の需給逼迫注意情報発令日は首都圏と中京圏で計23日と、2030年代後半平均の1.6倍だった。全面停電は少ないが、集合住宅や住宅地単位で15〜90分の給湯停止や厨房回路の出力制御が常態化した。これに伴い、家電各社はコンプレッサー効率より、断熱保持とデジタル円決済対応の蓄電池連携機能を競う。家庭で使う電気が『いつ来るか』を前提に、冷蔵庫の設計思想が変わった。

市場調査会社JMRA総研によると、2044年度の国内冷蔵庫販売額は前年度比12%増の1兆1800億円だった。台数の伸びは3%にとどまる一方、1台当たり単価は14万8000円と2年前比で18%上昇した。伸びたのは高価格帯だけではない。8万円台の中位機でも、保冷材内蔵の相変化蓄冷モジュールや、食材ごとの温度優先順位を自動設定する庫内制御が標準になりつつある。日立グローバルライフソリューションズ、パナソニックコネクト家電、ハイアールアジアは、停電保持18時間超の機種を今夏に集中投入する。

小売りの棚割りも変わる。ヤマダデンキやエディオンは、冷蔵庫売り場を「長時間保持型」「家庭蓄電連携型」「配送頻度最適化型」に三分し始めた。配送頻度最適化型は、単身高齢者や共働き世帯向けに、週1回配送でも食材劣化を抑える湿度制御と、宅配ボックス連携の収納導線を訴求する。従来の『大家族向け』『省エネ重視』という分類は後退した。食品スーパーも連動し、イオンリテールや西友は停電保持性能の高い冷蔵庫保有世帯向けに、冷蔵前提の大容量総菜を増やしている。家電売り場の変化が食品SKUの設計にまで波及した格好だ。

制度面でも動きが出る。経済産業省は5月にも、省エネラベルを改定し、白物家電に『需給調整耐性表示』を追加する方針だ。対象は冷蔵庫、冷凍庫、給湯機で、短時間の出力制御下でも食品衛生や生活維持に支障が出にくい性能を星印で示す。家電メーカーには追い風だが、消費者団体は「計算資源向け送電のしわ寄せを家庭の自己防衛に転嫁している」と反発する。特に低所得の単身高齢者ほど旧型機を使い続ける傾向が強く、停電保持性能の格差が食費や健康に直結しかねない。

冷蔵庫は長く、壊れるまで使う家電だった。だが、人口減少下で物流の再編、送電の時間管理、単身長寿化が重なり、いまは家庭の『保蔵インフラ』として再評価される。シャープは生鮮庫を簡易医薬保冷に転用できる引き出し構造を打ち出し、三菱電機は自治体の災害備蓄連携を見据えた共同購入モデルを提案する。かつて容量競争の象徴だった冷蔵庫は、家庭の耐停電力を映す装置になった。市場が問うのは豊かさの大きさではなく、制約下で生活を何時間守れるかに移っている。