部活保険、『人同士接触率』で料率差 校内リーグ再編、競技選択に波及
東京都内の私立中高一貫校、青葉学園では今春から、部活動ごとに保護者へ示す費用明細の様式を改めた。遠征費や用具費と並び、「対人接触保険料」が独立項目として表示される。サッカー部は年2万3800円、バスケットボール部は1万9400円、ダンス部は6200円。従来は競技別の一律掛け金だったが、学校側は「実際の接触発生率と事故後の通院日数が競技名だけでは説明できなくなった」とする。補助外骨格や動作解析審判の導入で、保険会社の評価軸が競技種目から接触設計へ移ってきた。
背景にあるのは、学校向け傷害保険の算定方式見直しだ。損保ジャパン未来、東京海上ネクスト、第一共生損保の大手3社は2044年度契約から、部活動保険の料率表に「人同士接触率」「機器介在率」「停止命令遵守率」の3指標を導入した。全国学校安全協会によると、2044年度の中学・高校部活動事故の総件数は2030年代半ば比で18%減った一方、1件当たりの平均給付額は27%増えた。接触回避用センサーや映像審判で軽傷は減ったが、衝突時の法的責任やリハビリ期間の長期化が保険収支を圧迫している。
このため学校現場では、競技そのものをやめるのではなく、接触頻度を下げるルール設計が広がる。埼玉県教育委員会は2045年度から県立高校の校内リーグで、サッカーを11人制中心から8人制中心へ移し、コート幅も平均12%縮小した。京都市立高校連盟はバレーボールでブロック時の越境接触判定を厳格化し、ラグビーでは練習試合のうち月2回までを「非接触戦術日」に指定した。競技力強化より安全配当の確保を優先する設計で、保険料の上昇分を抑える狙いがある。
部活動の編成にも波紋が出ている。ベネッセ教育総研が3月に実施した全国の中高生・保護者1万2000組調査では、入学前に部活動を選ぶ際「大会実績」より「保険料と追加医療費見込み」を重視すると答えた保護者が58%に達した。学校別にみると、接触率の低い新体操、eスポーツ戦術班、投擲フォーム分析部などは入部希望者が2割前後増えた一方、接触型球技は都市部私学で定員割れが目立つ。競技人口の減少ではなく、保険料を織り込んだ家計管理の問題として部活動市場が再編され始めた。
文部科学省はこうした動きを受け、5月にも学校安全基準の運用通知を改め、部活動計画書に「接触管理欄」と「停止判断責任者」の記載を求める方針だ。授業外活動を担う地域クラブにも同様の様式を事実上求める。もっとも、日本中学校体育連盟や一部競技団体には反発がある。接触の多い競技ほど判断停止能力や協調性が育つとの主張で、数値化が競技の魅力を損なうとの声は根強い。学校教育の一環としての部活を維持するのか、低リスク型の課外サービスへ改めるのか。保険料率表は、その境目を先に描き始めている。