2045年4月26日(水曜日)

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教育

大学寮、食堂より『郵便室』増築 本人受領規制で留学生獲得に差

本人確認付き配送の滞留が常態化、住環境整備が進学先選び左右
2045年4月22日 5:00

東京湾岸の私立大群で、春学期の新入寮が一巡した後も宅配カウンターの混雑が続いている。星陵国際大学(千葉市美浜区)は今月、留学生寮2棟の共用ラウンジを改修し、24時間対応の本人確認付き郵便室を新設した。狙いは食事や交流空間の拡充ではない。在留カード、就労許可端末、学内認証鍵など、代理受け取りが難しい物品の受領遅延を減らすことにある。大学側は「寮の満足度を左右するのは食堂の献立より、本人受領が止まらないかどうかになった」と話す。

背景には、外国人定住の進展と本人確認規制の強化がある。総務省と出入国在留管理庁は2030年代後半以降、在留関連書類や高度就業人材向け端末の配送で、顔認証と在留資格照合を組み合わせた手交を標準化した。利便性は高まった半面、講義、実習、アルバイトで不在がちな学生は再配達を繰り返しやすい。文部科学省の調査では、2044年度に留学生寮で7日超滞留した本人確認配送は1施設あたり月平均186件と、2040年度比で2.3倍に増えた。

このため大学の投資対象が変わってきた。関西学術都市の公立大3校は2045年度予算で、食堂改装費の合計18億円を見送り、郵便室・認証ブース整備に22億円を振り向けた。受領端末を寮内に置けば、配送事業者は夜間に一括投函し、学生は生体認証で受け取れる。日本郵政グループ、SGホールディングス、楽天ロジスティクスは大学向けに「在留連携ボックス」を投入し、温度管理、本人照合、通関情報表示を一体化した。寮管理会社の伊藤忠アーバンコミュニティは、郵便室面積が延べ床の3%を超える案件が新築学生寮の4割に達したとみる。

波及は大学選びにも及ぶ。留学生向け進学支援大手のグローバル進学機構が3月に実施した調査では、日本の大学志望者が住環境で重視する項目は「多言語相談体制」が68%で首位だったが、次いで「本人確認配送の受け取り容易性」が61%に達し、「食事の宗教対応」(54%)を上回った。理工系では実験器具、医療系では実習用認証媒体の受領が学修開始日に直結するためだ。寮の郵便処理能力が、事実上の入学後立ち上がり速度を左右している。

もっとも、投資負担は小さくない。本人確認設備には閉域認証網、24時間監視、偽装検知用カメラが必要で、100室規模でも初期費用は7000万〜1億円にのぼる。地方大学には重荷で、国立大学協会は文科省に対し、留学生受け入れ促進交付金の対象へ郵便室整備を加えるよう要望した。大学関係者の間では、教育の質とは無関係な物流競争が進みすぎるとの懸念もある。ただ、学生サービスの実態が生活基盤の確保へ移るなか、寮は寝泊まりの場から、本人資格を途切れさせないインフラへと役割を変えつつある。