2045年4月26日(水曜日)

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医療

薬局、待合室より『同席採血台』拡張 老化抑制薬の継続管理で店頭再編

月1回の簡易検査が定着、調剤は無人化進む一方で説明と採血導線が収益源に
2045年4月23日 5:00

東京都足立区の調剤薬局チェーン、メディリンク薬局西新井生活圏店では、午前9時の開店直後から処方薬の受け取り客より、採血ブース前の列が先に伸びる。店内中央には従来の待合椅子を減らして、家族や介助者が横に立てる「同席採血台」を4台並べた。対象は糖代謝や肝機能を簡易測定する指先採血で、老化抑制薬やフレイル進行抑制薬の継続条件として月1回の検査を受ける高齢就労者が中心だ。薬剤師は「薬を渡す時間より、検査前後の確認に人手を割く」と話す。

背景にあるのは、保険適用が広がった老化抑制医療の運用実務だ。厚生労働省は2039年の「加齢関連機能維持薬適正使用指針」で、対象薬の継続処方に生活機能評価と定期血液検査の組み合わせを事実上求めた。病院側は外来混雑を避けるため、検査の一部を地域薬局に委ねる体制へ移行した。日本保険薬局協会によると、簡易採血設備を持つ薬局は2041年度の18%から44年度に61%へ拡大した。調剤件数が横ばいでも、検査併設店の粗利益率は平均で2.8ポイント高い。

変化は店舗設計に及ぶ。アインファーマシーズやクオールホールディングスは2044年度から新店標準を改め、待合面積を平均22%縮小する一方、採血・服薬説明・副作用同席確認の区画を1.6倍にした。高齢単身者が多い都市部では、本人の理解確認だけでなく、雇用主の産業保健担当者や遠隔家族との同時接続スペースを備える店も増える。処方箋は業務AIで自動点検され、薬の取りそろえもほぼ無人化した結果、人が介在する価値が「説明責任の履歴化」に移った。

意外な波及先はドラッグストアだ。ウエルシアHDやツルハHDは化粧品棚の一部を転用し、自由診療の老化管理プログラム向け検査カウンターを設ける。血中炎症指標や筋量維持の関連項目を測り、その場で提携医療機関へ送る仕組みで、1回3800〜6200円が相場だ。従来のOTC販売と異なり、継続利用が前提のため、店側は購買単価より離脱率を重視する。大和総研は、検査併設型ヘルスケア小売り市場が44年の9200億円から48年に1.6兆円へ拡大すると試算する。

一方で論点もある。全国保険医団体連合会は、薬局での継続検査が事実上の『保険外ふるい分け』になりかねないと指摘する。簡易検査で基準を外れた患者に追加受診を求める運用が増え、地方では受診先不足が治療中断につながる例が出ているためだ。厚労省は今月、地域薬局向けに「継続判定補助業務標準Ver.2」を通知し、検査値だけで服薬停止を誘導しないこと、外国人居住者向けに12言語の説明テンプレートを用意することを明記した。

薬局は長く『待たせない調剤』を競ってきた。だが人口減少下で慢性疾患と長寿就労の管理が日常業務になるなか、競争軸は滞在時間の短さではなく、継続治療を脱落させない店頭能力へ移りつつある。処方薬を受け取る場所から、働き続ける身体を毎月点検する拠点へ。薬局の床面積配分は、医療制度が何を地域に下ろしたかを映す指標になってきた。