2045年4月26日(水曜日)

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不動産

分譲マンション、宅配BOXより『監督席』 家事代行の遠隔常態化で共用部改修

管理組合が通信遮蔽と視認導線を整備、空室対策より稼働住戸の運用品質競う
2045年4月24日 5:00

東京都江東区の築18年の分譲マンション「ブリリア有明ノースレジデンス」では、1階ロビー脇にあった来客ラウンジの半分を今春、ガラス囲いの小部屋4室に改めた。名称は「監督席」。住民が室内の家事アンドロイドや見守り端末を遠隔監督するための共用設備で、遮音等級はT-3、通信は管理組合契約の閉域網を使う。宅配BOXの増設案を退けてまで改修したのは、荷物受け取りより在宅機器の停止判断や引き継ぎ連絡の需要が上回ったためだ。

背景にあるのは、住戸内作業の外部化が進んでも、最終責任を住民が負う場面が増えたことだ。家事代行会社や高齢者見守り事業者は、事故時の責任分界を明確にするため、調理、浴室清掃、服薬確認などの工程で本人または登録親族の即時承認を求める契約を広げている。東急コミュニティーによると、首都圏の分譲マンション管理組合から受けた共用部改修相談のうち、遠隔監督用ブース関連は2044年度に前年度比2.7倍の620件となり、宅配関連を初めて上回った。

不動産評価の軸も変わり始めた。みずほ不動産販売が3月にまとめた中古流通分析では、首都圏で総戸数100戸以上のマンションの成約単価は、専有部面積や駅距離が同水準でも、共用部に閉域通信室や通話遮音区画を備える物件が平均6.4%高かった。築年数の古い物件でも、管理規約に遠隔就労・遠隔監督設備の利用細則があり、予約課金がデジタル円で完結する物件は空室期間が11日短い。空室対策というより、入居後の機器運用負荷を下げられるかが価格に映り始めている。

管理会社各社は改修提案を急ぐ。大和ライフネクストは共用部のワークラウンジを監督席へ転用する標準工事を商品化し、1席あたり導入費を118万円に抑えた。野村不動産パートナーズはエレベーターホール付近に簡易監督席を置き、帰宅直後に住戸へ入る前の5分利用を想定する。長谷工コミュニティは外国人居住者向けに12言語の操作支援を付け、親族が海外から接続する際の本人確認も一体化した。共用部改修の提案書で、集会室やキッズルームより先に監督席の必要数を試算する例が増えている。

論点は公平性だ。家事アンドロイドや見守り機器を使わない住民からは、特定利用者向け設備を修繕積立金で賄うことへの反発が出る。国土交通省のマンション政策室は今月、管理規約標準モデルの解説集で、監督席を「住戸内安全設備を補完する共用インフラ」と位置づけ、利用者課金と全体負担の併用を例示した。防犯カメラ映像との連携や第三者のぞき見防止措置も論点で、共用部の利便性向上策が、結果としてプライバシーと費用配分の調整問題を管理組合に突きつけている。

マンション市場はこの10年、空室をどう埋めるかが主題だった。足元では、稼働している住戸をどれだけ安定運用できるかに関心が移る。長寿単身世帯、外国人定住、高齢就労の拡大で、住まいは休息空間であると同時に、機器と外部事業者を束ねる運用拠点になった。宅配BOX、ゲストルーム、共有書斎に続き、監督席は管理組合の新たな投資項目として定着する公算が大きい。中古市場では今後、間取り図に共用監督席数や閉域回線容量が併記される可能性がある。