2045年4月26日(水曜日)

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金融

学資保険、進学費より『再訓練解約枠』で競う 初職短命化で設計一変

18歳時の一括受取から、30代まで引き出せる可変型へ
2045年4月24日 5:00

明治安田みらい生命と第一フロンティア生命、かんぽネクストは今春、学資保険の新商品を相次ぎ投入した。共通するのは大学入学時の一括給付を主眼に置かず、契約者の子どもが25〜34歳で職業再訓練を受ける際の中途引き出しを手厚くした点だ。都内の保険代理店では、この4月の学資保険相談のうち約4割で「大学費用より、卒業後の学び直し資金を確保したい」との要望が出た。初職の寿命が短くなり、教育資金の時間軸が変わっている。

背景には、企業の採用・配置が新卒一括育成から職務単位に移り、若年層の仕事の陳腐化が早まったことがある。厚生労働省の職業移動調査によると、24〜29歳の就業者が卒業後7年以内に受ける公的・民間の再訓練回数は2044年度に平均2.3回と、2030年代後半の1.4回から増えた。金融庁の集計では、18歳満期型が主流だった学資保険の新規契約比率は2040年度の72%から2044年度に46%へ低下し、代わって30歳前後まで解約控除を抑えた可変満期型が31%を占めた。

商品設計も従来の『祝い金』発想から離れる。明治安田みらい生命の「みらい学修準備」は18歳、22歳、30歳の3時点から受取時期を選べ、指定職業訓練機関への支払いなら30歳まで解約控除をゼロにする。第一フロンティア生命は業務AI監督、介護補助機器保守、多言語行政支援など人手不足分野の講座受講時に予定利率を上乗せする。かんぽネクストは全国1万9800局の窓口で、親ではなく被保険者本人による用途変更相談を受け付け始めた。

家計側の動機は学費上昇だけではない。文部科学省によると、私立4年制大学の標準納付総額は2044年度に平均612万円と10年前比で3割強上がったが、同時に卒業後10年以内の追加訓練支出は世帯平均で188万円に達した。大学、専門職短大、民間認証講座を組み合わせる履歴が一般化し、教育費は『入学前に備える一度きりの支出』ではなくなった。保険各社は学資保険を、家計の流動性を細かく刻む長期口座商品へと位置づけ直している。

もっとも課題も多い。再訓練向けの引き出し自由度を高めるほど、従来の貯蓄性は薄れやすい。日本アクチュアリー会は、利用時期の分散で運用見通しが読みにくくなり、固定利率型では逆ざやリスクが高まると指摘する。消費者団体からは、保険と教育ローン、積立投信の差が見えにくくなるとの懸念も出る。金融庁は今月、学資・再訓練一体型商品の比較表示で、大学進学時受取額と30歳時受取額を並列開示する監督指針案をまとめた。

教育資金の保険化は、少子化下で縮む子ども向け市場の延命策でもある。生命保険協会によると、18歳未満人口はこの20年で2割弱減った一方、学資関連保険の保有契約高は微減にとどまる。各社が契約期間を延ばし、用途を進学から再訓練まで広げたためだ。保険会社にとって学資保険は、子育て世帯との最初の接点から、長寿化した就業人生の入口資金を囲い込む商品に変わった。教育と労働の境目が曖昧になるなか、金融商品の名称だけが旧来のまま残っている。