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マーケット

日焼け止め、『塗布指数』で棚替え 接客アンドロイド普及が化粧品設計を変える

人肌向け性能より機械外装への残留性重視、小売りは業務用と共通陳列
2045年4月25日 5:00

ドラッグストア大手のマツキヨココカラ&カンパニーは今夏商戦から、日焼け止め売り場の表示基準に「塗布指数」を導入する。紫外線防御力や耐水性に加え、塗布後に金属外装、樹脂関節、視覚センサー周辺へどの程度残留しやすいかを数値化する。東京・豊洲の旗艦店では、人向けスキンケア棚の横に接客アンドロイド用メンテナンス用品を並べ、共通販促を始めた。化粧品売り場で人と機械の境界が薄れ始めている。

背景には、屋外接客や配送補助に就く人型アンドロイドの増加がある。日本チェーンドラッグストア協会によると、店頭業務で稼働する対人接客アンドロイドは4月時点で推計18万台と、2030年代後半の3.4倍に増えた。利用企業は直射日光下での外装劣化を防ぐため、従来は工業用コート剤を使っていたが、来店客との接触時に白浮きや油膜が目立つ欠点があった。化粧品各社はこの隙間を突き、低反射でセンサー汚損を起こしにくい保護剤を日焼け止め棚に載せ始めた。

資生堂は3月、業務用新ブランド「SOL-Guard Pro」を投入した。顔認証窓周辺の透過率低下を3%未満に抑えつつ、樹脂表面温度を最大4.2度下げるとする。花王も介護・外食向けに、関節部へ塗り広げやすい高伸展タイプを発売した。いずれも薬機法上は化粧品ではなく雑貨扱いだが、販路は従来の工具商社よりドラッグストアの方が伸びる。イオンリテールは関東120店で、人用UVケアと機器保護剤の横断棚を導入し、関連売上高が前年同期比28%増えた。

市場の波及先は意外に広い。人向け日焼け止めでも、接客現場では「アンドロイドに触れても外装に跡が残りにくい」ことが選定条件になりつつある。外食や空港では、従業員が塗布したクリームが案内機の手すりや介助アンドロイドの前腕に転写し、清掃回数を押し上げる事例が増えた。ポーラの法人営業部門によると、ホテルや百貨店が求める仕様はSPF値より低転写性へ移り、試験項目に「機器外装残留」が加わった。化粧品の評価軸が、人の皮膚の上だけで完結しなくなっている。

制度面でも整備が進む。日本化粧品工業会と日本ロボットサービス協会は6月にも、屋外業務機器周辺で使う塗布剤の自主表示指針をまとめる。想定項目は、視覚センサー透過率、外装残留度、清拭回数、子ども接触時の安全性の4つだ。経済産業省も生活支援ロボット安全基準の運用解釈を見直し、利用者が日常的に塗布する保護剤の表示を保守契約に反映できるよう整理する。メーカーは人用と機器用を分けた売り場づくりより、成分と用途の境界管理を急ぐ。

もっとも、課題は残る。皮膚刺激が小さい処方ほど、金属表面への定着力が弱く、炎天下の長時間業務には向かない場合がある。逆に機器向けの耐久成分を強めれば、家庭内で子どもが触れる場面の説明責任が重くなる。国民生活センターには、家庭用アンドロイドの腕部保護剤を人の顔に誤用した相談が今春だけで214件寄せられた。売り場の融合は進む一方、表示と教育が伴わなければ事故と苦情を招く。化粧品市場は今、肌のための商品から、接客空間全体の摩擦を減らす用品へと射程を広げている。