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金融

賃貸保証、『連帯人』より『停止復旧履歴』 高齢単身の入居審査に新指標

見守り機器の運用実績を点数化、保証会社が家賃債務と孤立リスクを一体査定
2045年4月26日 5:00

家賃債務保証の審査で、親族の年収や勤務先より、住戸内機器の「停止復旧履歴」を重視する動きが広がってきた。全国賃貸保証協会が今月まとめた指針案では、見守り端末、服薬支援機、室内移動補助機器などの異常停止から復旧までの平均時間、外部連絡の成立率、月間の手動介入回数を標準項目に盛り込んだ。高齢単身者の増加で、滞納そのものより、孤立による発見遅れが賃貸経営の収益変動を大きくしているためだ。

背景には、保証事故の内訳変化がある。みずほ保証総研によると、主要12社の代位弁済案件に占める「死亡・長期入院起点」の比率は2036年度の11%から2044年度には29%に上がった。未払い家賃の発生前に、異常停止した生活機器が数日放置される例が目立つ。保証会社は従来、年金受給額や預貯金残高、緊急連絡先の有無で審査してきたが、実際の延滞率との相関は限定的だった。代わって注目されるのが、日常的に機器トラブルへ対応できているかを示す復旧履歴だ。

オリコフォレントインシュアは3月から首都圏と中京圏で新商品「スマート居住保証L」を始めた。入居者本人や家族の同意を前提に、住戸内機器の稼働ログを匿名化し、停止後12時間以内の復旧率が95%以上なら保証料を年0.15ポイント下げる。東急住宅リース、積水ハウス不動産東京などは導入物件で空室期間が平均9日短縮したとする。貸主側では、事故後の残置物処理や特殊清掃費用の抑制効果も見込み、礼金ゼロ物件でも採算が立ちやすくなった。

この動きは、入居支援の担い手にも商機を生んでいる。SOMPOケアリンクは保証会社向けに「復旧伴走」サービスを始め、月額2980円で機器停止時の遠隔再起動、近隣協力員の派遣、服薬機の再設定を請け負う。UR都市機構は千葉市と堺市の高齢者向け団地で、保証審査に使える標準ログを出力する共通ゲートウエーを整備した。従来は福祉部門が担ってきた見守りが、金融商品に接続され、賃料査定や家賃保証料の価格形成に組み込まれ始めた格好だ。

もっとも、機器運用が苦手な入居希望者を市場から締め出すとの懸念は根強い。立憲国民党は「生活機器リテラシーによる住宅差別を招く」として、金融庁と国土交通省に審査説明義務の強化を求めた。全国居住支援法人連合会も、老化抑制医療を受けていない高齢者や外国人高齢者ほど不利になりやすいと指摘する。金融庁は今夏にも、家賃債務保証業者向け監督指針を改定し、停止復旧履歴を使う場合の同意取得方法と代替審査手段の明示を求める方向だ。

賃貸市場では、孤独死対策を保険や見守りで後追いする段階から、入居前の信用設計に織り込む段階へ移っている。高齢化率が36%に達した日本では、住める人を選ぶ審査から、住み続けられる条件を数値化する審査へ重心が移る。保証会社にとっては事故率低下が狙いだが、住宅へのアクセスが機器管理能力と一体で値踏みされる構図は、賃貸金融の新たな論点になりそうだ。